
謎2「理科室五人目の少年はどこへ行ったのか」
1巻第5話108ページの右下のコマがこの謎の始まりである。一九七一年八月三十一日、ケンヂたちが6年生の時のこと。このコマには、夜に校門を通過して校内に入る少年が五人描かれている。一番後の人物の肩から上は、モンちゃんのセリフ「……で、みんなを誘ったわけ……」に隠れて見えないが、体形からして、他の四人と同じく、少年である。
問題の概略は次のことである。
このコマでは五人が校内に入ったとされている。だが、顔が描かれたり、名が記されたりしているのは、ドンキー、モンちゃん、ケロヨン、コンチの四人だけである。もう一人は誰なのか。(以下、この「もう一人」を理科室五人目と呼ぶ。)
〔理科室五人目は誰か〕ということは大きな謎なので、謎2では、理科室五人目が校内のどこへ行ったのか、ということについて述べよう。
理科室五人目の存在は他の場面からもわかる
1巻第5話で、ドンキーの葬式の後、ケロヨンは、理科室に向かった夜にドンキーが理科室から飛び降りたことを話題にし始める。モンちゃんも自分が一緒にいたことを認めている。そして、モンちゃんは「コンチがいたな…… あともう一人… 誰だっけ?」と言っている。このことばによっても、ドンキー、モンちゃん、ケロヨン、コンチと、あともう一人いたことが解る。この〔もう一人〕が理科室五人目である。
モンちゃん、ケロヨン、コンチは校門を通過したものの、〔カツマタ君がバケて出て、フナの解剖してる〕という噂におびえて、理科室に入れない。だが、ドンキーは「オバケなんていないよ。」と言って、平然と理科室に向かう。1巻第5話110ページでは、理科室に向かって廊下を歩いていくドンキーが背後に人の気配を感じ、振り向いて「誰?」とたずねている。
フクベエ、ヤマネ、サダキヨは理科室で〔いちど死んでよみがえる〕という〔奇跡〕(14巻第9話)をおこなおうとしているから、ドンキーの後をつけることはできない。モンちゃん、ケロヨン、コンチでもない。だから、ドンキーのあとをつけたのは理科室五人目である。
14巻第8話149ページでも、ヴァーチャルアトラクション(過去の情景・人物を再現し、その中に現実の人物が入場して過去を知ったり、登場人物たちと会話したりできる、疑似体験装置)の中で、ドンキーは「さっきから、誰かついて来てるの知ってるよ」と言っている。この〔誰か〕も理科室五人目である。
(なお、ヴァーチャルアトラクション製作者が、ドンキーのことばをどのようにして知り得たのか、ということも謎の一つである。)
また、14巻第6話114ページでは、ヴァーチャルアトラクションの中で、ドンキー、モンちゃん、ケロヨンと一緒にいたコンチは「今、誰かうしろにいたみたいな……」と言っている。この〔誰か〕も理科室五人目である。
同じページで、小泉響子も、「今、あたしも人影がひとつ多く見えたんだけど……」と言っている。この〔人影〕も理科室五人目である。
理科室五人目はすばやい
理科室五人目には特異な能力がある。
それは、
たいへんすばやい
ということである。また、
存在していることをほとんど察知されない
ということである。
そのことは、上に述べたことからわかる。
理科室に向かった少年の数が五人であることは、1巻第5話108ページの右下のコマに確かに描かれている。それなのに、他の四人は誰も理科室五人目を覚えていない。また、理科室五人目の姿を明確に見たとする場面もない。
モンちゃんは「コンチがいたな…… あともう一人… 誰だっけ?」と言っているから、わずかには見たのだろうが、記憶に残るほどではない。
コンチは「今、誰かうしろにいたみたいな……」と言っているが、その姿を確認できなかった。108ページの画には描かれているから、誰かいたはずである。それなのに、コンチはその姿を確認できなかった。
理科室五人目は校内に残った
さて、理科室に入ったドンキーは、フクベエの〔いちど死んでよみがえる〕という〔奇跡〕を見る。だが、ドンキーはそのことを「嘘だ。」「トリックだ。」と言った。すると、フクベエは「“絶交”だ」と宣言した。このことばを聞いたヤマネとサダキヨはドンキーに向かってきた。ドンキーは身の危険を感じ、理科室の窓から飛び降りた(14巻第9話)。 1巻第5話113ページ以下によれば、理科室から飛び降りたドンキーは一目散に校外に駆け出した。モンちゃん、ケロヨン、コンチもこれを追いかけて校外に駆け出した。四人が校外に逃げたのである。
五人が校内に入り、四人が校外に逃げたのだから、一人だけ残っていることになる。その残った一人は誰か。理科室五人目とするしかない。
理科室五人目は理科室に行った
校内に残った理科室五人目は、どこへ行ったのか。
理科室五人目は、理科室に向かうドンキーの後をつけていた。そのドンキーは理科室に入るのだから、
理科室五人目の行く先もまた理科室だ
ということになる。
もともと、少年たちは理科室に行くつもりをしていたのだから、理科室五人目が理科室に入るのは当然のことである。
では、理科室五人目は理科室で何をしたのか。それは謎3で述べよう。

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